大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和59年(う)51号 判決

公職選挙法所定の公民権停止制度は,もとより選挙の公正を害する選挙犯罪によって処罰された者を一定期間選挙に関与させないことにより,選挙の公正を確保するために設けられた制度であって,選挙犯罪により懲役刑の言渡を受け,その刑の執行を猶予された場合の公民権停止の期間は,その裁判の確定後,刑の執行を受けることがなくなるまでの期間であり,原則として執行猶予の期間と一致する(同法252条2項)ものであるから,選挙事犯において,刑の執行猶予期間を裁定するにあたっては,その本来の趣旨とする善行保持の期間という観点に加え,公民権停止の期間という要請も満たされなければならないと解すべきところ,記録によれば,本件は昭和58年4月10日施行の富山県議会議員選挙に際し,砺波市選挙区から立候補の決意を有していた被告人が,立候補届出前の原判示各日時に,原判示の趣旨で自己の選挙運動者である前田光久らに対し,6回にわたり現金合計86万円を交付または供与し,一面事前運動の各所為に及んだというものであって,県会議員に立候補しようとする者自らが犯した,選挙犯罪の中でも最も悪質とされる買収事犯であり,しかも自己を支援する選挙民らにも多大の累を及ぼし,多数の処罰者をみるに至っていることなど本件各犯行の回数,買収資金の額,経緯,態様等の事情に徴すれば,その犯情は悪質であって,被告人の刑責は重いといわなければならず,加えて,当裁判所の事実取調の結果によって認められる原判示選挙における被告人の運動員らが犯した同種違反事件の量刑,その他この種事犯に対する量刑一般との権衡をも併せ考慮すると,被告人には前科がなく,本件につき反省の態度がうかがえること等の被告人に有利な事情を斟酌しても,原判決が被告人に対する刑の執行猶予期間を3年間としたのは,前記公民権停止制度の趣旨にかんがみると,軽過ぎるものといわなければならない。

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